The Montessori Method
~幾何図形から見るモンテッソーリ教育~
今回は、モンテッソーリ活動の中に登場する「幾何図形」に注目しながら、モンテッソーリ教育の学びについてご紹介します。
モンテッソーリの環境には、子どもの発達を助けるさまざまな「教具」が用意されています。そして、その教具をどのように扱い、どのように学びにつなげていくのかを、大人が丁寧に示していきます。
その中で感覚教育として「幾何図形」が登場します。
三角形を組み合わせて、形の不思議を発見する
感覚教育のエリアにある「構成三角形」という教具では、三角形を組み合わせて、さまざまな形をつくります。
同じ三角形を見つけて辺と辺を合わせると、ある形が現れ、さらに三角形を加えて合わせると大きな正三角形ができます。色ごとに三角形を合わせると最終的には同じ面積の正三角形が現れますが、その組み合わせは様々です。

この活動を通して子どもたちは、三角形を「見る」だけではなく、実際に手で動かしながら、形がどのように構成されているのかを体験していきます。
「すべての直線図形は三角形に分けることができる」というような抽象的な概念を、幼児期の子どもたちに言葉で説明する必要はありません。
自分で触れ、動かし、組み合わせる経験を重ねることで、子どもはその概念をイメージとして少しずつ身につけていきます。
こうした幼児期の具体的な体験が、後の学童期における数学や幾何学の学びを支える土台となっていきます。
「まる・さんかく・しかく」から始まる幾何学
モンテッソーリ教育で幾何図形に親しむ最初の教具の一つが「幾何たんす」です。
最初に出会うのは、円、正三角形、正方形。
一見すると、とてもシンプルな「まる・さんかく・しかく」ですが、ここから子どもたちの幾何学への探究が始まります。
モンテッソーリ教育では、幼児期の子どもたちにも「円」「正三角形」「正方形」といった正式な名称で紹介します。
幼児期は言語を吸収する力が非常に豊かな時期です。大人には難しく感じられる言葉でも、子どもたちは形や体験と結びつけながら自然に覚えていきます。
そして、図形の名前を知ることは、単に言葉を覚えることにとどまりません。
「これは何という形だろう?」と知りたい気持ちが生まれ、身の回りにある形にも目を向けるようになります。
三角形から円へ――「知る」ことで世界が変わる
幾何たんすには、三角形から十角形まで、さまざまな多角形があります。
では、もし二十角形、三十角形、百角形……と、辺の数をどんどん増やしていったら、どんな形に近づいていくでしょうか。
辺の数が増えるほど、多角形は少しずつ丸みを帯びていき、やがて「円」に近づいていきます。
こうした発見は、子どもたちにとって単なる知識ではありません。
「どうしてだろう?」
「もっと知りたい」
「身の回りにも同じものがあるかもしれない」
そんな好奇心へとつながっていきます。
モンテッソーリ教育では、このような「不思議だな」「面白いな」という感覚を大切にします。
学ぶことが楽しいと感じられることは、知識を身につけること以上に、子どもたちのその後の学びを豊かにしてくれるものだからです。
7種類の三角形を知ると、世界の見え方が変わる
さらに幾何たんすでは、さまざまな種類の三角形にも出会います。
正三角形、直角二等辺三角形、直角不等辺三角形、鈍角二等辺三角形、鈍角不等辺三角形、鋭角二等辺三角形、鋭角不等辺三角形。
一見すると、とても難しそうな名前が並んでいます。
しかし子どもたちは、好きなキャラクターや車の名前を覚えるように、形と音を結びつけながら、あっという間に自分のものにしていきます。英語も日本語も難解な名称が並びますが、それぞれの特徴と名前を一致させていきます。しかも驚くことに、実はこの世界に三角形はこれらの7種類しか存在しないのです。
そして、図形を知った子どもたちは、教室の中や日常生活の中でも三角形を見つけるようになります。

例えば、床に差し込んだ光と家具の影がつくった三角形。
あるいは、紙をハサミで切ったときに偶然できた三角形。
それまで何気なく見ていたものが、「自分が知っている形」として見えてくるのです。
これは、子どもたちの世界が広がっている瞬間でもあります。
学びは、教科ごとに分かれているわけではない
このようにモンテッソーリ教育では、幾何図形一つをとっても、感覚教育、言語教育、さらには日常生活の中での発見へと学びが広がっていきます。
「図形を学ぶこと」と「言葉を学ぶこと」、「身の回りのものを観察すること」は、別々の活動ではありません。
それぞれの学びがつながり合うことで、子どもたちは一つの世界を、さまざまな角度から理解していきます。
一つひとつの学びが点となり、やがて点と点がつながって線になり、さらに線が重なって面になっていく。
モンテッソーリ教育が「ホリスティック(統合的)な教育」と呼ばれる理由の一つは、まさにここにあります。
数教育、言語教育、感覚教育、日常生活の練習。
これらはそれぞれ独立したものではなく、さまざまな「レンズ」を通して、子どもたちが一つの世界を理解していくための学びなのです。
モンテッソーリ教育が子どもたちに与えるものの一つは、知識そのものだけではありません。
自分の目で見て、手で触れ、考え、発見し、そして現実の世界につなげていくための「鍵」です。
今回ご紹介した幾何図形の活動も、その小さな一例です。
教具を手に取って形をつくるところから始まり、図形の名前を知り、身の回りにある形を発見し、さらにその不思議について考えていく。
こうした一つひとつの体験が、子どもたちの「もっと知りたい」という気持ちを育て、学びを自分自身のものにしていきます。
私たちはこれからも、子どもたちが日々の活動の中でたくさんの「なぜ?」「おもしろい!」に出会える環境を大切にしていきたいと思います





