モンテッソーリ教育の言語教育では「読み(Reading)」の学びにおいて、一文字ずつ拾い読むことから始まり、やがて言葉の意味や情景を心で感じ取れるようになるまでの道のりが丁寧にスモールステップで組まれています。
それは単に文字や単語を覚える訓練ではなく、「読む」という行為の本質──言葉を通して、言葉の向こう側にある筆者の心や世界の息づかいを感じ取る力を育てることを最終的な目標としています。やがて子どもが文章を読むとき、そこに描かれた風景が思い浮かび、登場人物の気持ちが伝わり、書き手の内にある思想や感情にふれることができるようになること。それが、モンテッソーリ教育が目指す「トータルリーディング(統合的読み)」です。そこで子どもたちが得ることになるのは、一冊の本を読み解く技術だけではなく、「学びそのものを楽しむ」という姿勢です。
これは言語教育に限ったことではありません。数教育を通して発見される数の世界の楽しさ、感覚教育を通して発見される色や音、幾何図形の世界などモンテッソーリ教育全般にも当てはまるものです。
その純粋な学びの楽しさを知った子ども達は、やがて文学を味わい、数学や科学を探究し、この世界を知ることへの情熱を感じて「学びの旅人」となるでしょう。
哲学者アラン・ワッツは、現代の教育が「次の段階の準備」として今を消費している危うさを指摘しました。幼児期は小学校のため、小学校以降はその先の受験のため、大学は就職活動のためにと─。そうして私たちは、いつの間にか「未来のための今」ばかりを生きるようになってしまう。
けれども生命をはじめ万物の存在の本質は、「Playful(遊び心に満ちたもの)」だとワッツはいいます。それは音楽に例えれば分かりやすいといいます。音楽は次の段階への効率的な進行を優先したりはしません。無駄とも思える寄り道も楽しみながらその瞬間の中に精神を開放します。
月や星々といった天体の事象も、子犬のしぐさも、蝶の羽ばたきも、海の波もどれもが「今この瞬間」の魅力に溢れています。人の営みである「学び」もまた、その延長線上にあるです。
学ぶことは、その豊かさを「今」味わうことでもあるのです。
効率化が過ぎて、「コスパ・タイパ疲れ」が出てきているといわれる今日の私たち大人もまた、「知ること」の喜びを通して、自分の心を豊かに育てていけるように、そのような子どもの姿に倣いながら、「今」という瞬間に息づく豊かさを共に感じていきたいものです。
FrontierKids Global School
施設長 眞島 拓也