今回はモンテッソーリ教育における「こども観」について紹介したいと思います。
マリア・モン テッソーリは、子どもを長年にわたって科学的に観察する中で、子どもは自分の中に「内なる教師を持っている」と表現しました。
一見ミステリアスな表現ですが、それは人類だけでなく、多くの生命体にも共通する神秘的な生命の力のようなものです。生命に関わることは、ふと考えてみると普段は当たり前のようでも、実はとても神秘的なことが意外に多いものではないでしょうか。
それは、誰が教えるわけでもないのに卵からかえったウミガメの赤ちゃんがひとりでに海に入っていくようなことです。子どもの精神の内には「内なる教師」が働いていて、ある時期には「はいはいをしなさい」「立ち上がって歩いてごらん」「走りなさい、階段を登ったり降りたりしなさい」と導き、子ども達は嬉々として発達に必要な行動にのめり込み、成長に必要な運動を習得していきます。それは幼児期を通して続いていき、「指を動かして作業しなさい」「体をうまく使って掃除をしなさい」「語彙を増やしなさい」「数を数えなさい」「お友達とグループを作って遊びなさい」と子どもたちは 「内なる教師」いわば自然の生命の力に導かれて、その時期に必要な発達課題に本能的に突き動かされるような形になります。そのことに取り組むことが面白くてたまらず繰り返し繰り返し行います。
ところが、そのような素晴らしい力があっても、それを発揮できない環境や状況にある時、そのエネルギーは別な方向へ流れて行ってしまいます。そんな時には、子どもたちはストレスを感じ、 苛立ちや怠惰、乱暴や現実逃避へとなって、本来の理想的な生命の力は発揮されなくなります。しかし、そのような中で、大人が子どもに、その時期にあった適切な環境を整えることで、軌道修正ができ、一つの作業に対して全人格を傾注するような場面を作ることができることがあります。そうすればまたその子どもは「内なる教師」と環境が一致し、その子の「生命本来の魂」が 求めていることへ向かっていきます。それは自由に自分らしい発達をしていくことでもあり、子どもの心は大きな喜びに溢れるのです。
このような状態になると、子どもは「真の姿」を見せるのだそうです。子どもは、満ち足りた表情で使い終わった道具はきれいに元に戻し、落ち着いた静かな環境と秩序を自分から求めるといいます。こうした感覚は大人の私たちにも共感できるものがあるでしょう。近年Mindfulnessと呼ばれるものはこれに近いでしょう。
忙しない現実の日々にあっても、こうした満たされ整然とした精神状態になれる瞬間をより多く持てることこそ、幸せの秘訣かもしれません。このように、子どものもつ生命本来の可能性に働きかけることが「Aid to life 生命への援助」と呼ばれるモンテッソーリ教育の大切な理念の一つです。
FrontierKids Global School
施設長 眞島 拓也