「ママ、つぎはぼくのばんだよ!」
先日、年少の息子とクッキー作りをしていた時に、こんな言葉をかけられてハッとしました。
最初は「やってごらん」と任せていたのに、生地を伸ばすのも型抜きも、息子から「あーできない!」「むずかしいな〜」という声が出るたびに、「まだ小さいから難しいよね」「手伝ってあげなきゃ」とつい手を出してしまっていたのです。でも、息子は「できない」と言いながらも手を止めず、「自分でやってみたい!」と試行錯誤を楽しんでいました。私はその姿を見ず、言葉だけを受け取って「こうした方がいい」と大人の価値観で判断し、成長の芽を摘んでしまっていたことに気づき、反省しました。
マリア・モンテッソーリが提唱しているように、日々の保育の中では「子どもたちの持つ力を信じて待つ」ことを大切にしています。「もう、できない!」と悔しそうに声を上げることもありますが、それでも諦めずに挑戦する姿に、成長と意欲の強さを感じます。
思い返せば、生まれたばかりの赤ちゃんも誰かに教えられなくても、呼吸を覚え、おっぱいを吸い、手足を動かし、やがて立ち上がり歩き始めます。子どもたちは、生まれた瞬間から“挑戦と吸収”の力を持ち、自ら多くのことを学び取っていく、とても有能で賢い存在です。だからこそ、「できない」という過程そのものが、彼らにとって大切な学びなのです。「この方法が難しいなら別のやり方で…」と自ら工夫し、また挑戦する。その積み重ねの中で「できた!」という喜びを得ていきます。
一方で、私たち大人は「まだ難しいだろう」と思って、つい“よかれ”と手を出してしまいがちです。けれど、それは子どもたちの挑戦や吸収の機会を、知らず知らずのうちに奪っているのかもしれません。寝返りを頑張っている赤ちゃんに、いつまでも手を貸していては、一人で寝返りをする力は育たないのと同じです。
とはいえ、日々の家庭では時間に追われ、子どもの挑戦をじっくり見守ることが難しい場面も多いでしょう。そんな時は、「ここまでやったら一緒にしようね」と区切りを決めたり、「5分だけ自分でやってみよう」と小さなステップを設けたりすると、子どもの意欲を尊重しながら無理なく見守ることができるでしょう。
今回の出来事を通して、私自身も「待つ」ということの大切さを改めて感じました。子どもたちの持つ力を信じ、彼らが自ら伸びていく瞬間を、これからも大切に見守っていきたいと思います。
フロンティアキッズ新宿
2歳児クラス担任 宮﨑 千佳