「NO」と言える力  〜幼児期から始まる包括的性教育~

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「NO」と言える力 〜幼児期から始まる包括的性教育~

 近年の調査では、薬物を使用した若者の動機の中で最も多いのが「先輩や友達に勧められて断れなかった」という理由だと報告されています。
「どう断ればいいのか分からなかった」「嫌われたくなかった」——そうした気持ちが、危険な行動につながってしまうことがあります。

 

 私たちは、「断る力」は一朝一夕に身につくものではないと考えています。
その土台となるのは、幼児期からの「自分の気持ちを大切にすること」「相手の気持ちを尊重すること」を繰り返し学ぶ経験です。
保育園での生活の中にも、その芽はたくさん見られます。
「今は貸したくない」「やめてほしい」「順番を守ってほしい」といった言葉を、自分で伝えること。
そして、相手の気持ちを受け止めながら折り合いをつけていくこと。
こうした日常のやりとりが、「NOと言える力」を少しずつ育てています。

 

 この考え方の背景にあるのが、「包括的性教育(Comprehensive Sexuality Education:CSE)」です。
ユネスコなどが提唱するこの教育は、「性」を単に生物学的な知識としてではなく、「人権」「ジェンダー」「人間関係」「感情」「意思決定」といった幅広いテーマとしてとらえ、子どもが自分自身と他者を尊重しながら生きていく力を育てることを目的としています。

 

 保育園における性教育というと、少し早い印象を受けるかもしれません。
しかし、幼児期の「からだ」「こころ」「人との関係」を学ぶことこそが、その入り口です。
「自分のからだは自分のもの」「イヤなことはイヤと言っていい」「友達の気持ちも大切にする」「違いを認め合う」——こうした基本的な姿勢を身につけることが、将来、自分の意志で安全に行動できる力につながっていきます。

 

 ご家庭でも、お子さんが「イヤ」「こうしたい」と言ったときに、「そう思うんだね」と一言返してあげるだけでも十分です。
忙しい日々の中で、いつも丁寧に話を聞くのは難しいものです。しかし、少し立ち止まってお子さんの気持ちを受け止めるだけで、「自分の気持ちを話していいんだ」と感じる経験になります。

 

 それは単なるわがままではなく、「自分の気持ちを表現する練習」であり、成長の大切なプロセスです。
 子どもが自分の心とからだに自信を持ち、人との関わりの中で「NO」と言えるようになること…それが、これからの社会を生きていくうえでの大切な“生きる力”につながっていくと思います。


フロンティアキッズ上馬

施設長 伊藤由子