「なぜ?」から始まる思考と探究

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「なぜ?」から始まる思考と探究

 「ヘビクイワシの顔ってなんで赤いの?」と聞かれ、「なんでだろうねぇ」と私。国立科学博物館の展示室にずらりと並ぶ鳥の標本を、二人の娘と一緒に眺めていたときの一場面です。

 

 娘は暫く考え、「赤い実を食べるからじゃない?」と目を輝かせました。「羽の中(皮膚)が赤いのかもしれない」「血の色が透けて見えてるのかもよ」と頭の中で思考がどんどん進んでいきます。

 “シロクマは白く見えるけど、実は皮膚は黒い”ということや、“ニホンザルのお尻が赤いのは、皮膚の下を通る血液の色が透けて見えるから”ということを娘は知っています。そういった、これまでに得た知識も自身の発想の助けになっているようです。

 そんな会話を耳にした3歳の妹も、「怒ってるんじゃな~い?」と持論を披露。子どもならではの自由な発想が面白いと感じると同時に、自分たちなりに筋道を立てて考える姿に感心しました。

 

 保育所や幼稚園等における、幼児教育の指針では、”幼児期の終わりまでに育ってほしい「10の姿」”として、子どもの育ちの方向性が示されています。

そして、その「10の姿」のうちの一つに“思考力の芽生え”があります。

 

 では幼児期において、“思考力”はどのように育まれていくのでしょうか。

次の3つのステップを何度も繰り返し経験することで育っていくと私は考えます。

 

①身近な物事について「なぜ?」という疑問を持つ。(思考の出発点)

②自分で気づいたり、考えたり、工夫したりすることを楽しむ。(試行錯誤)

③友達の考えに触れる中で、自分と異なる考えがあることに気付き、自分の考えを修正したり、より良い考えを発見したりする。(修正・調整・発見)

 

 日常の何気ない瞬間に生まれる「なぜ?」。その一つひとつが、子どもたちの思考力や探究心を育てる大切な種であり、その答えを探して試行錯誤する過程こそが思考力の育む養分となっているのです。

 

 インターネットやAIの発展により、現代社会では“答え”を探し出すことがとても容易になりました。すぐに答えにたどり着くことも、これからのデジタル社会では必要なことかと思いますが、それだけでは“思考力”は育ちません。また、“未知”や“予期せぬ変化”に、インターネットやAIの力だけでどれだけ対応できるかは未知数です。人間の思考力は、これからの未来においても確実に必要とされる力なのです。

 

 「ヘビクイワシの顔ってなんで赤いの?」の答えは、結局分からず終いでしたが、「なんでかなぁ」と目を輝かせる娘の姿に、“思考力の芽”がちょっとだけ膨らんだように感じたのでした。

 

                 フロンティアキッズ新宿

施設長 石田 拓也