この時期になると子どもたちに紹介したくなる植物があります。鮮やかな黄色が美しい「キンシバイ」という花です。漢字では「金糸梅」と書き、その名の通り、金色の糸のようなおしべが特徴的です。大人の腰の高さ程の小低木で、街路樹としてよく植えられているため、都内でも様々な種類のキンシバイを見ることができます。また、よく似た花に「ビヨウヤナギ(未央柳)」という種もあります。柳のような細長い葉が特徴です。キンシバイもビヨウヤナギもオトギリソウ属の植物で共通点も多いですが、よく観察すると様々な違いに気付きます。
新宿園の近くで見かけるキンシバイの種類は「金糸梅」「大輪金糸梅」「西洋金糸梅」です。ぜひ、黄色い花を見つけたら、お子様と一緒に観察してみてください。花の形は?大きさは?葉や枝の生え方は…様々な違いに気付けると“観察”することの楽しさを感じられるかと思います。
観察することで“違い”に気付くことができ、違いに気付けると”分類”ができるようになります。分類ができると知識が整理され、知れば知るほどその魅力に気付けたり、新たな発見があったりもします。 (実はモンテッソーリのお仕事にも”分類”要素のある活動が多く存在します。)
「ファーブル昆虫記」で知られるジャン・アンリ・ファーブルさんは「見ることは知ることだ」と言いました。自らの目で観察することが真の知識につながるという思想で、ファーブル博士がどれほど観察を大切にしていたかが感じ取れる名言です。AIの発展などにより、社会ではますますデジタル化が加速していますが、実物を見て触って感じる体験は、当然ながらデジタル化のしようがありません。簡単に見ることのできない物について知るには、インターネットは最高のツールですが、”実物を見る体験”はこれからも大切にしたいですね。
余談ですが、大輪金糸梅の学名はヒペリカム・ヒドコート、西洋金糸梅はヒペリカム・カリシナムと言います。(園芸業界ではこれらの呼び方のほうが一般的なようです。) 一昨年は、園の子どもたちにこの名前も紹介したところ、その日本語には馴染まないような文字の並びを面白がり、何かのおまじないかのように何度も繰り返し読み上げて、その名を覚えたお子さんがいました。私の意図した楽しみ方とは少し違いましたが、思わぬ方向に活動が発展していく様子を目の当たりにして、私自身も面白かったことを覚えています。そんな彼も今では小学一年生。通学路に並ぶヒペリカム・ヒドコートを横目に、元気に小学校へ通っていることでしょう。
フロンティアキッズ新宿
施設長 石田拓也