新年度が始まって1か月が経ちました。新しく入られたお子さん達の泣き声も 日に日に小さくなり、今ではクラス担任以外の職員にもニコニコ笑顔を見せてく れるようになりました。進級した子ども達も同様に新しい友達関係を築き始めて います。楽しい日々が送れるよう援助していきたいと思います。
新聞の家庭欄に目を通していましたら、学校の先生に関する話が載っていまし た。内容は、「学級崩壊とまではいかないが、なかなか落ち着いて話を聴いてく れない」という、新学期になってからの若い先生の相談事項から始まっていまし た。その相談の答えとして、「新学期は、‶誰もが先生や友達の話を聴くことが できるクラス″であることが不可欠だ」と続いています。「新学期には先生から 子どもへの一方的な伝達や確認が多くなりがちで、それに黙って従うことばかり を学んできた子にいざ、『思っていることを話してごらん』と言っても対話が簡単にできるとは限らない。先生が話を聴こうとする姿勢を示し続けることが大事 で、地道にその姿勢を持ち続け、対話を行なっていくことが先生と子どもの信頼 関係構築に繋がる」と結んでありました。
私たち保育者も様々な研修で「対話」ということを学んできました。会話が日 常の情報交換をしあう、どちらかと言えば雑談と捉えられるのに対し、対話はそ れぞれの意見を述べ合い、より深く相互理解を深めていくという目的があります。
国連が定めた「子どもの権利条約、4つの基本原則」は、「差別の禁止」「生命・生存および発達に対する権利」「子どもの最善の利益」「子どもの意見の尊 重」です。この度、世田谷区では「世田谷保育の質ガイドライン」が改訂されま したが、国連で定めている子どもの権利をもとにガイドラインが作られています。 その中の一つに‶自由に自分の意見や思いを表明する権利″を保育の中で重視す るように述べられています。
日頃の私達の保育を振り返った時、「泣く」ことで気持ちを表現している子が います。小さければ小さいほど言葉でしっかり表現できなくて「泣く」ことで表 しますが、「泣くのはやめて!」というのではなく、「どうして泣いているんだ ろう?」と泣く原因を考えています。最近よく聞かれる言葉が、明らかにそれは ダメでしょということをしてしまった時に「ママがいい!」と泣く子が多くなっ てきました。そんなときには「そうね、ママがいいよね」とは言いますが、今は ママを話題に出す時ではないと思う時には、「今のは、ママじゃないよね。○○ したからいけなかったんだよね。」などと伝えています。また、幼児クラスにな ると、自分の考えもある程度しっかり持ってきているので、先ず「どうしたかっ たの?」などと子どもの話を聴くようにしています。集団だから、何でも大人の いうことを聞くべきというものではありません。子どもだって一人の人間なんで す。‶子どもは大人を小さくした存在ではなく、一人の人間として存在してい る″のだということは、モンテッソーリ教育の中でも言われています。子どもの 話に耳を傾け、そのことはどうなのかを受け止め、大人の側の思いも伝え、子ど もと一緒に考えてみる。そういうことが大事なのだと思います。まさに「対話」 です。
これからも、一方的に伝えるだけでなく、子どもの思いを受け止めながら双方 で考えあっていく保育を行なっていきたいと思います。
フロンティアキッズ上町
施設長 田原彰子