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「人間の傾向性」

2023年2月

 マリア・モンテッソーリは、教育ということを考える際に、それを人類の教育という枠組みで考えていました。そのため、モンテッソーリの思想には、人類全体に対する科学的考察や哲学的考察が随所に見られます。今回はその中でマリア・モンテッソーリが掲げた「人間の傾向性」というものを紹介させていただきます。

 人間の傾向性とは、老若男女問わず、人間の生涯を通じて機能するものであり、居住地域、文化、宗教、人種、経済状況、風習などに関わらず、すべての人類に共通する特徴です。いかなる生命体もその種の本来の姿で生きる時、最も幸せな状態になることができるものです。例えば、動物園の狭い飼育小屋に入れられたライオンやワシは真の意味での幸せな状態ではないでしょう。アフリカの広原で自分の種族のコミュニティーで生きるライオンやワシは真に幸せでしょう。

 同じように人間は「人間の傾向性」を発揮し、人間本来の生き方をすることで真に満足することができるでしょう。より身近な表現とすれば、それは「自己実現をする」ということです。本来備わった自分の潜在能力を発揮することで、自己を発見し、自分がなりえるものになろうとする欲求(自己実現の欲求)を満たします。「人間の傾向性」は自己実現のための大きなヒントとなります。それは人間が普遍的に持っているものなので、原始の人、私たち大人、子どもたちの行動にも共通して見出すことができます。

 以下に主な人間の傾向性をいくつかご紹介します。子どもたちの園生活にはもちろん、私たち大人も自分の人生を振り返り、このような項目を含んだ毎日にしていくことで、自己実現に役立てられそうです。

【探  索】
 新しい土地を旅行などで訪れた場合に、ホテルに荷物をおいたら、周りを見に行きたいと思う。  歴史を調べ、過去にどんなことが起こったのかを知りたいと思う。乳児期の子どもはものを口に  入れて触覚などの五感で感じ取ろうとする。

【間違いの訂正・繰り返すこと】
 内面から突き動かされるように、上達するまで、何度も繰り返し練習しようとすること。人は音楽を演奏する時に何度も何度も、イメージ通りに演奏できるようになるまでやってみようとする。  今の自分の能力に対して、少し難易度の高いことに対し挑戦し、失敗や成功を繰り返し、失敗と成功例の中からある程度の位置関係の見当をつけていく。そして徐々にできるようになることを楽しいと感じる。

【コミュニケーション】
 人は他者に何かを伝達し一緒に行動しようとする。原始の時代から後世に自分たちの文明を伝えようと、話し言葉だけではなく 、 石に絵や印を刻んだりすることを試みる。やがてより細かく伝達できるように、文字が発明された。
 時代が進むにつれて、電波で情報を飛ばし、ラジオや電話が生まれ、そして現代ではインターネットを通して世界中でリアルタイムにビデオ通話が可能となった。

【秩   序】
 新しいスーパーに買い物に行き、一度陳列されている物の位置を把握すると、その定位置をもとにして買い物をすること。もし、陳列棚が変更されると、また探さなければならず、いつも決まった位置に決まったものがあることを人間は望んでいる。
 特に子どもは自分の持っている秩序感が乱された時に不安やストレスを感じることが多い。

【手を使う作業をする】
 人間が手を使って作業しようとする傾向のこと。必要に迫られなくても基本的には人間はじっとしているよりも、何か作業を見つけて、手で物を操作して何かを生産しようとする。庭いじりをしたり、コーヒーを挽いたり、ペンや筆で絵を描いてみたりと、作業自体を楽しみながら、手を動かすことを好む傾向がある。

【自己コントロール】
 自分の意図した目的を達成するために、自分をコントロールすることである。
 この傾向性は特に3歳から6歳の子どもにはっきりと見られる。自発的な自己規律であり、特に正確なものを作りたいという思いから、自分を律しながら完成するまで集中して取り組む姿が見られる。

【社 会 性】
 特に、仲間を作りたいと考える傾向性のこと。人は誰でも、他者の恩恵を受けて生きている。特に自然の中で生きていく上では、人間は他の動物と比べて身体的に弱いと言える。しかし人間は仲間と社会を形成していくことで、地球の生態系の頂点に立つことができるようになった。

【精 神 性】
 世界のどこでも、人が亡くなればこれを弔うということを行う。
 人間には特定の宗教に属していなくても、自然などの大きな存在に畏敬の念を覚える。
 人間には自然と祈る、目に見えない大きな存在に敬意を持つという基本的な傾向性が備わっている。

Frontierkids Global School 施設長 眞島 拓也

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